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2014年11月30日

須賀敦子の世界展

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posted by (C)橘かがり
連休初日の土曜、港の見える丘公園の坂道を、息を切らしながら駆け上りました。
目指すは神奈川近代文学館
16年前に惜しまれながら亡くなった須賀敦子さんに再会するために。
1990年61歳のときに須賀敦子さんは『ミラノ 霧の風景』を刊行し、
一躍注目を集めました。その後『コルシア書店の仲間たち』『ヴェネツィアの宿』など
次々と珠玉のエッセイを発表し、高い評価を得ました。
その作品群は「エッセイ」の概念をぬりかえるほどの衝撃を与えるものでした。
生前刊行したエッセイ集はわずかに5冊ですが、
須賀さんは13年過ごしたイタリアの風土や、そこで出会った人びとを、
生き生きと鮮やかに描き出しました。
タペストリのように緻密に織り重ねて構築された世界は、洗練された文章とともに、
多くの読者を魅了し、今なお愛され続けています。
神奈川近代文学館学芸員のN様より、同館で須賀さんの回顧展があるとお知らせ頂き
楽しみにしておりましたが、会期終了間際に、ようやく出向くことができました。
私が特に影響を受けた「シエナの坂道」と題された一節を、展示の中に見つけて
胸が熱くなりました。以前にもこのブログでご紹介させて頂いた一節ですが、
その一部を再び引用させて頂きます。
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はじめてのブック・レポートに選んだのが『シエナの聖女カテリーナ』という、十四世紀のイタリアに生きた女性の自伝で、著者はデンマークの作家ヨルゲンセン、大学の図書館にあったのは、アメリカで出たばかりの英語版ハードカヴァーだった。
五百ページもあったろうか、当時の私の読解力では、ただ読破するだけでも大変な大冊なのである。でも大学に入れたというので、私は牡牛みたいにはりきっていた。よおし、読んでやろうじゃないか。(中略)
ルネッサンスの夜明けの時代ともいえる十四世紀の半ば、シエナの染物職人の娘に生まれたカテリーナ・ベニンカーサは(中略)幼いとき、自分は神に呼ばれている、という確信を得て、神だけにみちびかれて生きることを選んだ。
すくなくとも、そんなふうに本には書いてあった。ヨルゲンセンによると、両親はこれを心配し、一日も早くいい相手をみつけて結婚させようとするが、ごうじょっぱりなカテリーナは、意志の堅いことをわからせようとして、長かった髪をばっさり切り落とし、自分の部屋にたてこもった。
「神に呼ばれる」とか「神だけにみちびかれて生きる」というような表現は、キリスト教の伝統のなかではごく日常的に用いられるもので、私がカテリーナの伝記を読んだころ、カトリック教会では一方的に「修道女として生きる」という意味に解釈されていた。
でも、カテリーナは修道院には入らない。髪を切りはしたけれど、彼女は、学問をおさめ、政治にまで関与した。
「神だけに導かれて生きる」というのは、もしかしたら、自分がそのために生まれてきたと思える生き方を、他をかえりみないで、徹底的に追求するということではないか。
私は、カテリーナのように激しく生きたかった。
(「シエナの坂道」『遠い朝の本たち』筑摩書房)

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この一節に出会った頃、私は政治や社会問題に関心をもちながらも、
社会運動に関わることに一抹の不安や躊躇を覚えていました。
政治について語ることをタブー視する雰囲気が、私の周りには確かにありました。
しかし須賀さんの本を読むうちに、背中を押されるように励まされ、
信念に基づいて、恐れることなく、政治や社会問題にも立ち向かっていこうと
思えるようになりました。
同時に、葬り去られた現代史の矛盾について、書いてみたいと考えるように。
それが私に与えられた、役割のような気さえして。

須賀さんは晩年には小説に取りくみ、病床で原稿を書き続けていらしたと聞きますが、
未完のまま、惜しまれながら天に召されました。
遺稿となった小説の冒頭の手書き原稿が展示されていて、不覚にも涙がこぼれました。
文学館で泣いたのは、はじめてかも知れません。
「自分がそのために生まれてきたと思える生き方を、他をかえりみないで徹底的に追求する。私も、須賀さんのように激しく生きてみたい」
閉館ぎりぎりまで粘り、数々のお写真や原稿や書簡に接しての帰り道、
石畳の坂道を下りながら、あらためてその思いを強くしました。
図録も大変充実した内容で、学芸員の方々のご尽力に、あらためて感服しております。
須賀さんは人生の師匠とも呼ぶべき、永遠の憧れの方です。


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2011年02月11日

マイセン磁器の300年

マイセン磁器の300年展

西洋磁器の発祥となったドイツのマイセン窯の開窯300周年を迎えたことを記念して、
国立マイセン磁器美術館の全面的な協力のもと、
「マイセン磁器の300年展」が、サントリー美術館で開かれています。
18世紀初頭の開窯期から、王侯貴族の贅沢な磁器趣味、万国博覧会、
モダニズム時代を経て現代まで、各時代の様式とジャンルを網羅し、
その歴史の全貌に迫った展覧会です。

マイセン磁器の300年展

東西交易品の中でもとりわけ貴重だった中国の磁器は、
大航海時代以来ヨーロッパの王侯貴族を魅了し、
17世紀にはオランダ東インド会社を通じて大量にヨーロッパへ渡りました。
ザクセン選帝侯兼ポーランド王の「アウグスト強王」(1670-1733)は、
磁器を熱狂的に収集しました。
王の命令下、それまで西洋では謎とされてきた磁器の製法が、
錬金術師ヨハン・フリードリッヒ・ベットガー(1682-1719)によって
1708年にドレスデンで解明されました。
1710年王立磁器製作所のはじまりをもって
300年にわたるマイセンの歴史が幕を開けます。

ベットガーが開発したb器・白磁にはじまり、
東洋への憧れを物語る「柿右衛門写し」や「シノワズリ(中国趣味)」の飲食器、
王が夢見た磁器による壮大な宮廷動物園、
優美なロココ様式や万国博覧会出品の大作から、
知られざるモダニズム時代の傑作から現代の作品まで、
各時代の代表的名品が勢揃いしています。

マイセン磁器の300年展

20代の頃、ヨーロッパの陶磁器に魅せられ、陶磁器の店をめぐったことがありました。
値段が高くて入手することができないものがほとんどでしたが、
写真集を買って美しい陶磁器の写真を毎晩眺めては、
陶磁器専門のライターになるのを夢見たこともありました。
その頃憧れていた「アラビアンナイトシリーズ」に再会して、思わずうっとり。
艶やかで優美な姿に、久しぶりに見とれてしまいました。

マイセン磁器の300年展

この展覧会は3月6日までサントリー美術館で開かれています。

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2011年01月31日

スカイプラネタリウム 星空の散策

スカイプラネタリウム

六本木ヒルズ森アーツギャラリーにて「スカイプラネタリウム」が開かれています。
総合プロデユーサーは大平貴之氏。
星空を歩けたらいいね。そんな一言からこのプラネタリウムは誕生したそうです。

従来のプラネタリウムとは全く違う3次元プラネタリウムですが、
メガネの必要な立体映像ではなく、裸眼のままで、美術館を楽しむように、
360度見渡せるギャラリーの中を自由に散策します。
降るように星がまたたくギャラリーを歩くと、不思議な浮遊感を覚えると同時に
永遠の時を感じさせられます。まさに星空の散歩!
星の色、明るさ、座標などすべてが最新の天文観測データに基づいているそうです。
細部まで丁寧に作られていて感激します。

137億光年離れた宇宙の果てまで案内される映像も、迫力満点。
星雲や銀河に見とれてつい三回も見てしまい、137億光年を三往復してきました(笑)
知ることと、感じることと、楽しむことを同時に味わえる、
科学とアートの融合した、新しいタイプのエンターテインメントでした。

スカイプラネタリウム

帰りは六本木ヒルズの展望台で、夜景を楽しみました。
スカイツリーが話題ですが、私はやはり東京タワーがなじみ深く好きです。


スカイプラネタリウム
posted by 橘かがり at 02:18 | TrackBack(0) | 美術館・展覧会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする