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2017年10月28日

松浦寿輝氏『名誉と恍惚』谷崎賞授賞式&ドゥマゴ賞対談


18年前「ふるえる水滴の奏でるカデンツァ」という短編小説を読んで衝撃を受けて以来、愛読し、偏愛し、尊敬してきた作家・松浦寿輝氏の1300枚にもわたる大長編『名誉と恍惚』(新潮社)の谷崎賞受賞が決まり、授賞式に潜入してまいりました。選考委員の堀江氏の選評も素晴らしく、胸打たれました。
翌日は同作品でドゥマゴ賞をも受賞した松浦氏と川本三郎氏との対談を、Bunkamuraまで聴きに出かけました。
『名誉と恍惚』の醍醐味は、1930年代の上海の裏面が、逃亡者の目で捉えられていること。ジャズクラブが並ぶ華やかな大通りから、危険な路地裏まで、権力に追われる主人公は、地下の最底辺まで潜り込みます。暴力、麻薬、裏切、友情、エロティシズム、デカダンス。
エンターティンメントとしても存分に楽しめる豊かな物語性と、格調高く詩情あふれる文体が、作品の中で渾然と溶け合っています。
何と言っても一番の魅力は、主人公の孤独の深さを、これでもかとえぐり出してみせる点でしょうか。故国喪失者として素手で国家権力と闘うことになった日朝ハーフの主人公が、中国人たちと深い友情で結ばれ、助けられ、最後は上海を逃れ香港に脱出して行きます。もはやそこには国境は存在せず。こういう主人公を設定した点も、現代社会に生きる作家ならでは。極めてスケールの大きな作品に仕上がっているという川本氏の批評に、大きく頷きました。
二人の対談は、同じ上海を舞台にするカズオイシグロ『わたしたちが孤児だった頃』にも言及し、「土地の力が文章を書かせる」というイシグロ氏の言葉を引用してのトークは、深く鋭く胸に刺さりました。
夜更けに読み耽る小説の愉悦を、咀嚼し、反芻し、十二分に味わった2日間でした。
映画が大好きな松浦氏は、本作をベルトルッチ監督のような方に映画化して貰いたいとの夢があるそう。私もこの作品の映画化を楽しみにしています(^_-)


posted by 橘かがり at 01:46| 小説仲間・授賞式 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする