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2015年05月19日

谷崎潤一郎展  神奈川近代文学館にて

20150517 谷崎展&バラ1
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20150517ブログ谷崎展バラ園2
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20150517 ブログ谷崎展バラ園3
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港の見える丘公園に到着すると、あたり一面、甘い香りが濃く匂い立ち、坂道をなお上っていくと、色とりどりの薔薇が眼前に広がります。まさに百花繚乱――。
けれど今日の目的は、薔薇ではなく近代文学館で開かれている谷崎潤一郎展です。
名残惜しさを覚えながらも、神奈川近代文学館へと急ぎました。

谷崎の良い読者では決してない私ですが、最初に小説作法を習ったO先生が、谷崎の研究者でした。尊敬するO先生に少しでも近づきたいと、谷崎のにわかファンになりました。
端麗な文章と作品ごとに変わる語り口。通俗と芸術を融和させた作品。豊潤な物語世界。
展覧会では数多くの貴重な写真や書簡や書などを通して、谷崎の波乱万丈の生涯に迫っています。美貌の母のもとに生まれ、幼いころから神童の誉れ高かった谷崎。けれど生家は次第に没落。ようやく文壇での地位を確立し美しい妻を娶るも、理想の女性を求めて谷崎の旅は続きます。
美女から美女へと遍歴する様は、豪華絢爛の平安絵巻そのものです。そしてついに出会った運命の女性、松子夫人。
松子夫人が姉妹と共に平安神宮の櫻の下で写したというセピア色の写真が、広い会場の中でひときわ華やかに光り輝いて見えます。市川昆監督『細雪』の、花見の場面とそっくりです。いえ、それは逆で、おそらく映画が、この写真を模倣したのでしょう。
優雅な絵巻のような人生を歩んだ谷崎ですが、陰で泣いた女性は多かったのかも知れません。誰が言い出したのか<谷崎幻想の女>という表現があります。女たちは文豪の夢を叶えるために、理想の女を演じ続けたのではなかったかと。それが谷崎にエネルギーを与え、数々の傑作が生み出されます。けれどはたしてそれは、女たちの本望だったのでしょうか。
79歳で亡くなるまで執筆意欲は旺盛で決して衰えることなく、最後まで意欲を持っていたというプロットは、今読んでも斬新で勢いがあり、さすがは大谷崎と感服します。
1943年には、蒔岡家の華やかな生活を描いた「細雪」の雑誌連載が、「時局にふさわしくない」という理由で中止に追い込まれます。連載が中断された時、原稿の末尾に平和への思いを記し、黙々と細雪を書き続けたといいます。私家版として刊行しようと考えたけれど、それも紙の無駄と差し止められた経緯もあったそうです。傑作『細雪』がようやく日の目を見るのは、戦後のことです。
軍部とは何と無粋なところ、戦争とは何と愚かしいもの。そんな時代が二度と訪れないことを、切に祈るばかりです。
没後50年、谷崎潤一郎展 神奈川近代文学館 5月24日(日)まで。

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posted by 橘かがり at 15:04 | TrackBack(0) | 美術館・展覧会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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