猫の らんこ  マウスで遊んであげてね^^

2010年01月19日

ありがとう、ひずるさん。これからも、ずっと一緒に。

中学高校時代からの親友ひずるさんが、1月9日に天に召されました。
12月半ばに入院して、一ヶ月もたたないうちに旅立って行かれました。
今までいつも助けてもらってばかりだったのに、お別れも言えなかった私は、
告別式で弔辞をよませて頂きました。
ひずるさん、今までありがとう。どうか安らかにお眠りください。

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ひずるさん。まさか貴女の弔辞をよむことになるとは思いもせず、
私自身この場にいるのが信じられない思いです。
昨年12月、健康で、病気とは無縁のはずの貴女のご病状を偶然に知り大変に驚き、
もしかするともうこの世でお目にかかれないかもしれないと覚悟して以来、
私の周りの景色は、すっかり変わってしまいました。
そして余りにも早い旅立ちを知ったときの衝撃。
訃報を聞いたのは、以前ひずるさんとご一緒したことのあるライブ会場でした。
貴女の不在は、何によってもうめられるものではありません。
姉妹のいない私にとって、貴女は姉のような妹のような存在でした。
ご一緒にランチをしたり、お茶をしたりするひと時は、
心からくつろげる癒しの時間でした。貴女がいなくなって、
一体どうすればよいのだろうと、茫然と立ちすくみ、途方に暮れています。
弔辞をお引き受けしていいのか悩みましたが、
助けてもらってばかりだったひずるさんに、せめてもの御礼と感謝の気持ちをこめて、
貴女との思い出を振り返ってみようと思いました。

ひずるさんは中学からT女学院に入学、音楽部に所属なさいました。
私が出会ったのは、その頃のひずるさんです。長い栗色の髪を縦ロールにして、
ガーネット色のネクタイに金モールの紺のセーラー服の良く似合う、
可憐で愛らしい方でした。T女学院はミッションスクールでしたので、
毎朝の礼拝で賛美歌を歌い、行事の際にはハレルヤコーラスを歌いましたが、
ひずるさんのコロラトゥーラ・ソプラノのような美しい声を、忘れることはできません。

大学はM大学の仏文科に進まれ、卒論は、
林達夫「芸術へのチチェローネ」という著書にインスパイアされた、
ヴァトーをめぐる芸術論で、尊敬するお兄様に薦められた題材だったとうかがいました。
美しいものが大好きな、ひずるさんらしい選択だと思います。
ロココ時代を代表する画家ヴァトーの作品が、多くの芸術家の魂を揺さぶり、
後にヴェルレーヌが詩を作り、ドヴュッシーが曲を作ったと聞きます。
芸術家たちの時空を超えた魂の交流に、ひずるさんもきっと
心揺さぶられたのではないかと拝察しています。

大学を卒業直後の5月にご結婚、友人たちの中で最も早い結婚でした。
ご主人さまは、最初に出会ったときから、ひずるさんと結婚する予感を覚えたそうです。
皆で結婚式にご招待を受けましたが、結婚式がはじめての私たちは、
少し緊張しながらのぞみました。しかしアットホームな温かい雰囲気の披露宴に、
すぐに緊張もほぐれ、つい嬉しくなって、はしゃぎながらお祝いしたのを、
昨日のことのように思い出します。
二年後に長女ご誕生、四年後に次女ご誕生という、大変順調な人生を歩まれました。
お嬢さんたちお二人は、健やかに、たおやかに、大変ご立派に成長なさいました。
優しいご主人と聡明で美しいお嬢さまに囲まれて、まさにロココの絵のような、
明るく典雅で素晴らしいご家庭を築かれました。

しかしひずるさんは、人知れず努力をし、果たすべき義務をきちんと果たす方で、
たとえば趣味の観劇に出かけるときには、昼ごはんも夜ごはんも、
全て準備して出かけるというように、与えられた務めをきちんと果たす方でした。
お嬢さんたちお二人が、このように立派に育たれたのは、
ひずるさんのたゆまない努力の賜物だと思えます。
最近はご家庭で、フランス語やイタリア語などのラジオ講座を聞いて、
熱心にお勉強なさっていたということです。
入院が決まったときには、まるで旅行の支度をするように、自分で全て準備をして、
自慢のロングヘアーもばっさり切って、病院に向かったと聞きました。
病気の告知を受けたときも、動ずることなく、静かに運命を受け入れ、
病室では好きなバッハやショパンを聞きながら、いつもと変わりなく過ごし、
最後まで前向きに治療を受けられたとお聞きしました。
 
ひずるさん。貴女は人生の全てを受け入れ、許し、見守り、周りの皆を幸せにして、
この世での務めを全て果たし、静かに旅立って行かれました。
その旅立ちの見事さに、私はあらためて、貴女の凄さを思い知らされています。
貴女の好きだったヴァトーの『シテール島への巡礼』の絵を見ると、
茶色いドレスの裾を軽くつまんで、ふと振り返る女性の姿が、
貴女のお姿に似て見えてなりません。今頃はヴァトーの絵の中で、
楽しく微笑んでいらっしゃるのではないでしょうか。
貴女と出会えて、旅の途中を同行させて頂けたのを大変光栄に思います。
別れを言いたくはありません。貴女と一緒の旅は、これからも続きます。
どうか私たちを、遠くで見守っていてください。本当にありがとうございました。

シテール島への巡礼


フォーレ・レクイエム(In paradisum)
posted by 橘かがり at 21:00 | TrackBack(0) | 友人・家族・親戚 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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