新国立劇場にて平山素子の「Life Casting 型取られる生命」を
鑑賞して来ました。平山はダンサーとして多くの賞賛を浴び、数々の受賞をし、
ダンサー・振付家としての依頼が国内外から絶えないダンス・アーティストです。
この作品は第七回朝日舞台芸術賞とキリンダンスサポートを受賞しています。
作品は二部構成になっていて、第一部un/sleeplessでは
舞台に水槽が置かれ、女性四名、男性三名のダンサーが、
個となり、集団となり踊っていきます。
モダン、クラッシックなど、多彩な経歴を持ったダンサーたちが、
それぞれ異なる個性を活かした振付によって、
混沌とした中に、生命の強度をあみ出していくかのようです。
時間は行き先を失い、断片が浮き上がる。
感覚・感情は揺らぎ、そして形成される。
滑り落ちる思考、浮遊する身体。
何億もの夢のかけら。(プログラムより)
第二部Twin Rainでは、舞台を横断する凹凸のある壁と、
平山自身が人体モデルとなり、立体写真のデータを計測し、
光樹脂によって作られたという、等身大の彫像が置かれています。
照明によって陰影を増す舞台空間で、
平山の鍛え抜かれた身体が自らの彫像と向き合い、
壁にぶつかり、その大きさに圧倒されつつ、抗うように踊り、
わずかな隙間に入り込んで静止し、時を刻んでいきます。
最後には壁を突き破り、原初の肉体に戻って再び生まれ出ます。
細胞は記憶していた。
だから私は人間の形となり、
涙の意味を映し出す。
…運命は金色のしずくと折り重なる(プログラムより)
平山の持つ繊細な抒情性、斬新な技巧は、
ダンスの技術と表現力だけでなく、構成や振付にも共通した特性です。
私はこの舞台の中に、詩と彫刻とダンスの、激しいせめぎあいと、
痛みを伴った融合を、見たような気がしました。
そして型取られる命の姿を、舞台から受け取ったようにも感じました。
それは確かな手ごたえのあるものでした。
‘un/sleepless’‘Twin Rain’は身体の「形状」の型取りと
有機的な「動き」の型取り
2つのせめぎあいから舞踊のダイナミズムを
描き出すことを試みた作品である。
型取られた身体が語る声に耳を傾けるとき
生身の身体は新たな生命を紡ぎだす。
これはまさに現代の詩として輝きを放つ、舞踊への探求である。(プログラムより)
舞台の余韻は、私の中で、今なお流れ続けています。
静かに、そして、ゆっくりと。



